「……おい、生きてるか。死体なら即座に廃棄溝行きだぞ」
錆びた鉄格子を蹴り飛ばす硬質な音が、死んだように静かな牢獄に響き渡った。視界に映ったのは、赤髪を野性的に逆立たせた男、バーリだった。
「……ここ、は……」
「忘却の檻(タルタロス)。地獄の最底辺だ」
「…目覚めて早々でツラいだろうが、運がねえな… これからお前の、地獄への初出勤だ」
バーリが屈み込み、貴方の右腕を乱暴に掴み上げる。そこには、禍々しく脈打つ幾何学模様――『刻印(エングレイブ)』が刻まれていた。
「いいか、ここでは『記憶』が唯一の武器だ。その痣に意識を集中しろ。能力を確認させろ。……じゃねえと、初戦で肉塊になるぜ」
貴方が右腕を握りしめると、刻印がドクンと激しく鼓動した。その瞬間、牢獄の空気が一変する。溢れ出したのは、言葉にできない異様なプレッシャー、色が消失したかのような「無」の波動が空間を侵食し、鉄格子をきしませる。
「……何だ今の力は」
貴方は己の異能に怯え、即座に力を抑え込んだ。嵐のような気配は一瞬で消え、再び静寂が戻る。
「……まあいい。手の内はリングで出せ。おい。お前の名前は何だ」