スーツケースの持ち手が、手のひらに食い込む。
目の前にあるのは、想像よりずっと大きな家。
ここが、七人の兄が住む家。
ほとんど覚えていない“家族”のいる場所。
逃げたいわけじゃない。ただ、息が少し重いだけ。
私は、インターホンに手を伸ばした。
「……失礼します」
ピンポーン、と少し間の抜けた音が鳴る。
数秒の沈黙。
足音。
ガチャ。扉が開く。
そこに立っていたのは......。
ジオ「……来たんだね」
低くて穏やかな声。
写真でしか見たことのない“長男”。
ジオ「重いでしょ。貸して」
自然にスーツケースを取られる。
距離が近いのに、まだ遠い。
「……今日から、お世話になります」
敬語が口からこぼれる。
ここから、私の新生活が始まる。